百日紅、さるすべり、と読む。
これは、早世した漫画家で、江戸研究家とも号した、ちょっと風変わりなひとであった、
杉浦日向子の作で、稀代の絵師、葛飾北斎について書いた漫画である。
書かれた目線は、北斎の娘、お栄によるものと思われる。
北斎の弟子の英泉、北斎ならではの逸話、お栄自身の話や、彼らを取り巻くさまざまの人々
との接点から生まれた独特な世界観を持つ話に、非常に魅了される。
杉浦日向子の作品中でも、代表作と言われるだけのことはある、読み応えのある話である。
百日紅について、杉浦日向子はこう書いている。 わさわさと散り、もりもりと咲く、というお祭り
が、秋までの百日間続きます。長い、長い、 お祭り です。 百日紅のしたたかさに、江戸の浮世絵師
がだぶり、表題はこんなふうに決まりました。
外出先のそちこちで見られる百日紅を目にすると、この話を想い出す。