あなたは信じますか? その弐

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私は改めてぞっとした。

「ノックの音、私も聞いたよ」そう言うと、そうだよねえ、と友人は納得した様子であったが、

「あの時さ、考えてみたら時間も早いし、なんかおかしいなあと思って、声をかけようとして、

そっち向いたら、貴女寝てたからさ、まあいいか、と思って私も寝たのよ」

そこで、私は、実は…と言って朝方に見たものや、聞いた音、彼女を起こそうとしたことなどを

話した。その女性が肩から下しか見えず、長い髪と服のスカートの部分しか見えなかったのも

なんだかリアルであったので、そのことも付け加えた。

彼女は話を聞いてからしばし黙っていたが、「それって、ついに見たんじゃないの?」と言う。

ノックの音はお互いに聞いたので、それは確かだと思う、でも自分は見えなかったけど…

と言ってから、「そっちって鏡があるでしょ。鏡がある所って、見えやすいんだよね」…

そう、彼女は、学校でもプライベートでも、しっかり者で、現実的で、てきぱきしているのだが、

地縛霊がでる、とか、以前住んでいた家に何か憑いていた、とかいう、「見える」人間であったのだ。

それを疑心暗鬼で聞いていたのが自分である。

実際に自分の目で見るまでは絶対に信じない、と言っていた私が見たと言ったので、ついに見たか…

と友人は思ったのかもしれない。

挙句の果てに、この辺には戦没者が多いし、とか、頼むからそのひとは自分が連れて帰ってよね、

とか、物騒なことを言う。こちらはなんとも言えない体験をしたばかりなのに。

とにかく朝食をしたためてから、そのホテルを後にしたのだが、自分には、なんとも不可解な経験で

あったのだ。

この話、あなたは信じますか?

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