秋の長雨と言うが、少し肌寒いくらいの今日の関東平野である。
昨日が蒸し暑く、残暑のはしりになるのかと思う位の気温であったから、寒暖の差が激しいので
体調を崩すひともあろう。
自分は今はまあまあという感じであるが、季節の変わり目には気をつけろ、とは良く言われることだ。
身体の調子が優れないと、気持ちも鬱屈するような、どんよりとした空のようなそんな心持ちに
ならないとも限らない。
じめじめした気分をふっとばすような、読んでわくわくする、オモチロイ話がある。
痛快で、嬉しい驚きがあり、人間て捨てたもんじゃないなと思わせてくれる、そんな
ひとびとを取り上げた、水木しげるの「神秘家列伝」である。今のところ、其ノ四まで出ている。
この、其の四について取り上げたい。
ここに書かれている五人のうち、まさに痛快と言えるひと、安鶴について書いてみる。
西暦なら一八〇〇年代に、駿府にはちょっとした人物がいた…
安西の鶴蔵、ということで安鶴と呼ばれた男である。
そんな出だしから始まるこの数十ページには、左官の安鶴の、生涯が描かれている。
こういう生き方が羨ましいとか、こんな風だったら毎日が楽しいだろうとか、そんな次元ではなく、
このひとりの人物に、水木しげる流に言えば、ミリキを感じてしまうのだ。
誰かがどんな人間であったか、それだけでひとつの話になり、しかもそれが面白い。
ここでもまた、水木しげるの画力と話力が物を言うのである。
鬼太郎がどうのというのでなく、水木しげるが、ゲゲゲのひとだけというのは実に惜しいことなので
この一連の神秘家列伝を読むことを、お薦めする次第である。