戸田 誠二 スキエンティアより 

Pocket

かなり前、あるひとの薦めていた漫画にこの作品集があったのを

なんとなく気に留めていて、古本で購入して読んでみたのだった。

表題のスキエンティアは近未来らしい都市のスキエンティアタワーに

掲げられている女神像である。

知識とそして科学の女神を意味するのがスキエンティア。

そのスキエンティアにまつわる人々の物語が、七話収められている。

この漫画を薦めている人が自分とはかなり異なる価値観や考えの持ち主

のように思えて、それで興味を抱いた。自分では選ばないだろう物を読む

のが面白かろうと考えたのである。

先に結論から言ってしまうと、内容的には特に目新しさなどを感じは

しなかった。

それでも、未読のひとには薦めてみたい、そんな漫画である。

なんだか矛盾して聞こえるだろうか。

取り上げた第一話のボディレンタルは、言葉通り「科学の力」によって

ある人に受信機を取り付け、依頼人の脳波を飛ばし、遠隔操作で

運動神経などを操る。目、口、耳は共有する…そんな「奇妙な」

アルバイトに応募した主人公が、依頼人に自分の身体をレンタルすることで

どうなるのかという話だ。

文字にすると実もふたもないが、依頼人の遠藤という女性が

主人公の篠原香織にどんな影響を与えるのか、が話の核といえる。

「スキエンティア」の登場人物たちはそれぞれ「自分はこれでいいのか」

「この生き方を変えられたら…。自分を変えたい」といった悩みや

葛藤を抱え、そこで立ち止まり、或いは後退し、焦燥感を持っている。

特に家族、親との関係が上手くいっていない、或いはいっていなかった、そんな

彼らが社会や他人とどうかかわりを持ちそして、持っていこうとするか。

SFという紹介がされていたが、特にSF的という訳でもないと思う。

ふと立ち止まって自分のことを振り返ってみたい、そういうひとや

逆に今の生活や生き方に特に何も不満もない、そんなひとに

読んでみたらどうだろうと薦めたくなるような漫画である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)