ケンイチとともだち 2

Pocket

当番の掃除を終えると、ケンイチは一目散に下駄箱を目指しました。

大急ぎで上履きを脱ぎ棄て、スニーカーを履いて、雨の止んだあとの道路の埃のにおいを

吸い込みながら、空き地へ大急ぎで向かいます。

待ち合わせの時間にはまだまだ余裕がありました。

今日も友達より先に空き地に来ましたが、友達がくるのが昨日より

ずっと待ち遠しく感じられました。

ケンイチは枯れ樹の少し大きめの幹の乾いた部分に腰をかけ、ランドセルを

草むらにおいて、まだ雲の残る空を眺めながら、友達を待ちました。

20分ほどたった頃でしょうか。草むらから声がしました。

「にゃーーーお」

ケンイチは、その声の方に駈け寄って、猫を抱きあげました。

「やっぱり来てくれたんだね」

ケンイチは満面の笑みを浮かべ、喜びに顔を輝かせながら、胸が熱く

なるのを感じました。

「ニャー」

白に薄茶色のぶちがところどころにある、ちょっと薄汚れた、まだ大人に

なりきってはいない猫でした。

ポケットに忍ばせておいた煮干しを猫に数匹与えると、猫は旺盛な食欲で、

それをあっという間に食べてしまい、ケンイチを見上げました。

「ニャー」

「ごめんね、それしかないんだよ」ケンイチが申し訳なさそうに言うと、猫はそんなこと

気にしないで、とでもいうかのように、ケンイチの足に、尻尾をたてて、身体を

すりよせました。

愛情をあらわす、猫の、しぐさだそうです。

ケンイチはそんなことは知りませんでしたが、さっき感じた胸の熱さが

塊になったようで、照れるような、嬉しいような、そしてちょっと悲しいような、

妙な気持になりました。

暫く一緒に遊んで、猫が、じゃあね、というように、すっとどこかに行ってしまうと、

ケンイチも、自分の家に帰る時間だと気付いて、友達と過ごした楽しい時間を

思い返しながら、家への道を歩きました。

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