「あんなに約束したのになあ」
ケンイチは、つまらなそうに足元の小石を蹴って、ため息をつきました。
沈みかけた夕日が春の宵を彩り、オレンジ色の空には宵の明星が、明るく輝いています。
「ちぇっ」ケンイチは舌打ちをすると、家への道をとぼとぼと歩き始めました。
家に帰って、ご飯をもそもそと食べ終わると、「あら、今日はおかわりしないの?」と
おかあさんが心配して聞くのを背中で聞きながら、黙ってじぶんの部屋に行きました。
友達と遊ぶ約束をしていたのに、友達は来なかった。何時間も待ったのに…
ケンイチは本当にがっかりしていました。
それでも、もしかしたら自分がひにちを間違えたのかもしれないな、と思ったり、
いや、友達は自分のことが嫌いになったのかも、と思ったりしましたが、
また明日、学校の帰りに約束の空き地に行くことに決めました。
そうと決めたらなんだか安心して、眠くなってきたので、早めに寝床にもぐりこみました。
そうしていつの間にか、夢も見ずに寝入ってしまいました。
翌日、張り切って目覚めると、外は雨でした。それでもケンイチはめげませんでした。
学校の帰りが待ちどおしくて、大好きな給食の時間も、体育の授業も、上の空。
今日は友達に会えるんだ。
ケンイチは喜びに満ち溢れた気持ちを抑えきれずにいました。